本記事では米国技術士(P.E.)とはなんぞや?というところから資格取得のメリット、一次試験であるFE試験から最終的なPE試験の勉強方法まで解説します。
日本の技術士は知ってるけど米国技術士制度ってなに?
英語力を証明できるTOEIC以外の資格を取りたい!
PEを受験しようと考えているけどなんだか難しそう、、
本記事はこのような疑問にお答えします!
なかなかニッチな記事にはなりますが、合格までのステップを実体験込みでまとめましたのでぜひ最後までお楽しみください!
この記事の内容
それでは順番に詳細を説明していきます!
この記事の信頼性
著者の経歴
- エンジニアリング会社にて勤務
- 米国技術士補(FE chemical)試験に4ヵ月の準備期間で合格
- FE合格後、米国技術士(PE chemical)試験に5ヵ月の準備期間で合格
そもそも米国技術士(Professional Engineer)とは?
日本には国家資格として皆さんご存じのように技術士資格があります。
技術士は基本的には日本国内で有効な業務独占資格であり、技術士を有しない法人、個人は日本国内で各種エンジニアリング業務を社会産業に還元できません。
そのため技術士を受験するためには各種制約と専門分野での指定期間の経験が必要とされます。
以下のリンクに文部科学省が提示している各国の技術士相当の資格のまとめが記載されていますが、日本国内の技術士資格は比較的難易度が高く、かつ資格保有者の母体数も少ないことが分かります(日本国内のみで有効な資格なので当たり前ですが)。
それに対してPE資格は米国の業務独占資格であり、各州ごとに資格保有者が管理されます。
また広く認知されている資格であるため、資格保有者も他の技術士相当の資格に対して母体数がかなり多いことがわかります。
“PE”とはプロフェッショナルエンジニア(Professional Engineer 専門職技師)の略語であり、米国各州に置かれたPEボード(Board 規制委員会)が一定の要件を満たす技術者に対し専門職技師としての免許(License)を与えその行動を監督することにより運用されています。
参照:NCEES Model Law
技術士のアメリカ版!が一番わかりやすい理解ですね!
ただ技術士とは以下が異なります。
日本の技術士との違い
1点PE受験合格 = PE資格取得ではありませんので注意してください。
PEと名乗るためには米国のどこかの州に登録して正式にPEボードメンバーになる必要があります。
実務経験がなくても受験できるのはイイネ!
なぜPE資格取得を目指したのか?
著者が資格取得を目指した理由は一言でいえば
産業界へのAI実装のためにドメイン知識の基礎を英語で体系的に学ぶため
です。
スタートアップにて駆け上がる企業の講演会に参加した際にこれはチャンスだ!と圧倒的に感じたことがあります。
それはどれだけAI実証のスペシャリストであってもドメイン知識がないと実装は難しいということ (*ドメイン知識 = 専門分野知識)
逆を言えばドメイン知識x AI実装能力がかけ合わされば可能性は無限大ということです。
各種 AIスタートアップは AI実務のスペシャリスト集団ですが、ドメイン知識は不足しています。
そのため業界を選ばずIT化の知見がない企業とタッグを組んで、ドメイン知識を提供してもらいながら一緒に事業開発をするのが通例です。
思いました。遠回りすぎない!?
そっこーで AI実装して事業化するためにはドメイン知識を持つ開発者になればよくない?
もちろんそんな簡単な話ではないのは重々承知ですが、少なからず両方の知見がある人材になることでAI専門の企業とタッグを組むにも足元を見られず、
かつ迅速に事業化を勧められるのは間違いないと思います。
したがって実務で学んではいたものの偏っていたドメイン知識を資格取得を経由してまんべんなく基礎を習得したかった背景です。
ついでに専門分野の英語も勉強できるし、一石二鳥!
資格取得 = 知識完璧とは誤解しないように研鑽を続けよう!!
PE資格取得のメリット/デメリット
米国技術士のメリットとデメリットを以下にまとめました。
日本の技術士を目指している方も参考にしていただければと思います。
メリット
- 転職時に英語の能力+技術知識のアピールにもなる
- 海外の顧客との接点があれば、資格保有所として一目置かれる
- 資格登録すればアメリカでの業務独占資格を得る
デメリット
- 日本国内では資格の有効性はない
- PE合格後の資格登録の手順が複雑
即座に国内での技術士としての資格保有が必要でない場合においてはPEは技術力の証明、英語力のアピールの観点から十分に受けるに値する資格かと思われます。
また、私は本業でもエンジニアリング会社で技術者として執務しているため、資格勉強の際に感じたことは
これこの前の検討でやった計算と同じじゃん!
です。
日本の技術士資格が専門知識にニッチなことに対してPE資格の勉強、設問はそのまま実務に応用できるものが多いです。
実用性を第一に考える米国の資格らしいですね!
英語も勉強したいと思っていたし、P.E.を取得する勉強のがいいかも!!
一次試験 F.E.(Fundamentals of Engineer)試験の勉強方法
ここからは具体的に受験のための勉強方法を記載していきます。
記事上は目標を資格取得として記載していますが、業務上の必要に応じて出題可否にかかわらず勉強すべき分野に注力することはエンジニアとしてあるべき姿なので目的が資格取得なのか、技術の習熟化なのかで勉強方法はご自身で調節ください。
まずはPE試験の一次試験であるFE試験の詳細と勉強方法です。
FE試験概要
FE試験には各種専門分野があります。受験に当たっては最終的にPE資格を保有したい自分の専門分野を選択しましょう。
FE試験の勉強はPE試験の勉強にも直結します。
基礎学力の知識を問う試験で工学一般(数学、化学、電気、静力学、動力学、材料力学、流体工学、熱力学、土木、工学経済、倫理、環境など)が出題範囲となります。
2014年からはペーパーテストがCBT(コンピューター試験)となり、試験会場が東京と大阪の2か所に増えました。 コンピューター画面から呼び出すFE Reference Handbook(公式集)を参照しながら110問の問題を解き、画面に示されている複数の解答の中から正しい解答を選択します。
試験時間は休憩、ガイダンス等を含んで合計6時間(実質試験時間は5時間20分)です。
JPEC公式サイトより
FE受験のポイント
FE試験勉強方法
P.E.試験が各種専門分野の知識を問うのに対してF.E.試験では工学知識全般を問われます。
したがって分野に応じて内容は異なりますが、数学や物理学等の基礎知識も必要になります。
私の実際の対策を踏まえた勉強ステップを以下に示します。
FE試験勉強のステップ
- テスト持ち込みに対応した関数電卓を購入する。
- FE試験対策本を購入する。受験するFE試験の出題範囲をシラバスで確認する。
- 解説は参照程度に問題をひたすら解く。同時にReference Manualでの参照に慣れる。
- 解けなかった問題を再度解く(繰り返し)。1問あたり3分の解答時間を意識する。
1. テスト持ち込みに対応した関数電卓を購入する。
いきなり電卓!?となったかもしれませんがとても重要なので読み飛ばさず準備してください。
FE/PE試験ともにNCEESが認証する関数電卓のみしか持ち込みができません。
関数電卓は受験するパソコン上にもついていますが、計算速度がそれでは足りません。
受験対策中から関数電卓の使い方に習熟しておきましょう。
NCEESが承認している関数電卓は以下です。
- Hewlett Packard:HP33S,HP35S
- Texas Instruments:TI‐30X,TI-36Xの表記のある機種
- Casio:fx-115,fx‐991表記のある機種
なお、上記の国産メーカーの電卓は輸出仕様であり日本での入手は困難なため、日本での試験では以下の製品の使用がNCEESから認められています。
- Casio: fx‐570,fx‐912,fx‐915,fx‐993,fx‐995の表記のある機種およびfx-JP700,fx-JP900
(*予告なしに対応電卓の種別が変わることがあるので受験前に確認を忘れないようにしましょう)
日本国内で受験するのであれば私のおススメは以下FX-JP900です。
行列計算等もできることに加え、計算速度も速いです。
試験中は変数を組み込んだ方程式を電卓上で解くことが多いので、使い方を勉強中から練習しておきましょう!
2.FE試験対策本を購入する。受験するFE試験の出題範囲をシラバスで確認する。
受験申請を済ませたら以下の専門図書を購入。対策を進めましょう。
すべて英語+高額になるので手は出しずらいかもしれませんが、解説と問題が並列に記載されているので体系的に対策するためにはおススメです。
以下NCEESのサイトに会員登録することでFE試験のシラバスとReference Manualを無料でダウンロードできます。
上記参考書FE Review Manualの全カ所を対策するのではなく、自身の専門分野をシラバスからピックアップして対策しましょう。
シラバスにそれぞれの分野の出題比率も記載されているので、力を割くべき分野を取捨選択します。
3. 解説は参照程度に問題をひたすら解く。同時にReference Manualでの参照に慣れる。
自身の受ける分野の出題範囲を確認したら問題集でひたすら例題、課題を解きます。
この時にやりがちなのが章立ての説明内容を熟読、理解してから問題に取り組むことです。
自信を持って言います。天才でない限り熟読した内容の8割は活用できません。そしてすぐ忘れます。
特にFE、PE試験に限っては参考書の説明パートも英語であるため集中して読みだすと時間なんてあっとゆうまにすぎてしまいます。
自分で使える知識に消化するために問題を解いて分からなかった点を覚えるようにしましょう。初めは答えを見ながら理解して良いと思います。
その際にReference Manualのどこにその知識が書いてあるのか、実際に本番を想定して解くことをオススメします。
英語での記載であるため、分かりづらい場合は適宜日本語での参考書を活用してください。
以下のJSMEテキストシリーズが分かりやすくオススメです。
4. 解けなかった問題を再度解く(繰り返し)。1問あたり3分の解答時間を意識する。
ここまで来たらあとは問題を解く作業を繰り返すだけです。間違えた課題を中心に解答を見ずに回答できるように練習しましょう。
この辺りで自分の苦手分野が明確になってくると思うので、徹底的にその分野の対策をします。
FE試験対策本の問題を解くだけでも十分かと思いますが、実際の試験難易度に慣れるためにもNCEESの公式も模擬試験を解くことをおススメします。
NCEES公式問題集 購入方法
FE試験は時間との勝負になってきますので、模擬試験を通して実際の試験時間内での解答ができるか練習をしましょう。
この際に一問あたり3分程度で解くことを心がけてください。
数学とか忘れてる、、FE試験のが難しいかも、、、
二次試験 P.E.(Professional Engineer)試験の勉強方法
次にPE試験の勉強ステップを以下に記載します。
PE試験勉強のステップ
- NCEESサイトからPE用のReference Manualをダウンロードする。
- NCEES演習公式問題集を購入する。(FE同様NCEES公式サイトから購入)
- ひたすら問題を繰り返し解き、同時にReference Manualのどこに何が書いてあるかを理解する。
ほとんどFE試験の勉強法と同じなので詳細は省きますが、
FE試験より注力してReference Manualを活用できるように練習しましょう。
PE試験のReference Manualは分野によっても異なりますが500ページ以上あります。そして重要なのはこのReference Manual は実務でも活用できることです。
問題解答時にこのReference Manualを参照することが許されているのは実務を想定してのことです。
課題を実務での対応と想定して取り組みましょう!
PE試験対策用の以下の参考書も発行されていますが、誤字脱字が多いのとFE対策本に対して説明が分かりづらい印象です。
同シリーズのMechanical版も発行されています。
著者は両方を持って対策しましたが、NCEES公式の問題集で十分かと思います。
PE試験では時間制限はそれほど厳しくないので焦らず、1問ずつ慎重に解き進めましょう!
PE試験も実際の実務のイメージで対策しよう!
まとめ:FE/PE試験は手っ取り早く英語と技術知識の習得ができるオススメの資格
私の受験目的は専門基礎知識をまんべんなく抑えるためでした。建物でゆうところの強固な土台を構築できたと思います。
十分な土台があることで困難な実務課題に対しても掘り下げて考えることができます。
英語に関しても実務上の専門用語はおおかた理解できたと思っています。
ただし資格はそれ自体が目的ではありません、資格を取ってからの学びがスタートです。
知識の高層マンションを建てられるよう一緒に頑張りましょう!
本日は以上です。